黒河 理絵先生

黒河 理絵先生

名古屋中央支部に所属する先生方にインタビューするこの企画。第33回目は、名古屋市西区にある「黒河理絵司法書士事務所」の黒河 理絵先生のインタビューです。

 

ーー司法書士を目指したきっかけはなんですか?

 

実はもともと理系で、子どもの頃から脳の研究者になるのが夢でした。出産を経て、子育てをしながら名古屋大学理工学部修士課程を修了。その後、博士課程に進むことも考えましたが、ちょうど研究室がなくなるタイミングで、さらに奨学金を借り続けながらの厳しい道のりだったこともあり、断念しました。

そこで「どうせならこれまでとはまったく違うことをやってみよう!」と思い立ち、法律の道に進むことに決めたんです。

実は以前、千葉県の司法書士である伊見先生に、養育費について相談にのっていただいたことがありました。その際、法律というのは自分を守る大きな武器であることを実感。「司法書士は、正しく武器を使うことで依頼者を助けることができる」と強い印象を抱いたことも、司法書士を目指したきっかけのひとつです。

 

ーー受験勉強や試験でのエピソードについて

 

当時は経済的にも苦しかったので、学校には通わず独学で勉強をしました。

ヤフーオークションで中古の司法書士音声教材を購入し、そのカセットテープを持ち歩いてひたすら聴きながら暗記をしました。ただ、中古のため教材が古くて改正前の条文なども多くて…。六法を参考に現在の法律と照らし合わせて、頭の中で変換しながら聴きました。

試験の直前期には勉強に専念し、それ以外の時期には短期の仕事で働いて生活費を稼ぐといった生活を続けていました。地道に勉強を続け、3回目の受験時にはだいぶ知識が定着している実感がありました。でも残念ながらギリギリのところで落ちてしまって…。

ただ、合格した4回目の受験では「私が受からなかったら誰が受かるの?」というくらいの手応えを感じました(笑)

 

ーー合格後について

 

合格後は、司法書士事務所で6年ほど勤めました。今は独立して、自分のペースで仕事をしています。

当初、司法書士をめざして勉強していたころの理想像が「子育てと両立しながら仕事をすること」だったんです。今、家で子どもの帰りを迎えて、私が仕事をしている傍らで子どもが宿題をしたり、遊んだりしている…それが実現できていることをうれしく思っています。

 

GCUにて
小さく生まれた我が子を育てられたのも、自由の効く個人事務所を開業していたからこそ

 

ーー業務内容について

 

相続関係のお仕事が多いですが、成年後見センター・リーガルサポートという団体に所属しており、成年後見人・保佐人・補助人・後見監督人とほとんどの後見類型への就任経験があります。また女性であることや自分の経験を活かして、離婚や再婚、ひとり親家庭など悩める女性のサポートにも力を入れています。

 

ーー印象的なエピソードについて

 

以前、後見業務の中で担当した案件です。周囲が献身的にサポートしていたところ、本人さんが優しさに甘える気持ちからか車椅子を常用するようになり、一切歩かなくなってしまいました。

専門職の後見人・保佐人というのは財産管理が中心となりがちで、身上監護面についてはどこまで口を出すべきか悩むところです。しかしこの時ばかりはしっかり目を合わせて「このままでは歩けなくなってしまいますよ!いずれ寝たきりになってしまうかもしれない。本当にそれでいいんですか?」と必死に説得をしました。するとなんと、翌日から張り切って歩行練習をするようになり、元気を取り戻してくれたんです。

 

この出来事を通して、後見人や保佐人は家族ではないけれど、相手に寄り添い愛情を込めることで家族のように気にかけてくれる心の拠り所になりうるのではないかと気付かされましたね。そして人は生涯、そういう存在を必要としているのだということを実感しました。

 

その方は継続的に担当した初めての方でした。血はつながってないけれど責任を持って寄り添ったことで、まるで親戚のおじさんのような想いがありました。亡くなった時には、心にぽっかり穴が空いた感じになりましたね。

 

また別件で、後見業務における本人意思の尊重とは何なのか、本人の権利擁護とのバランスをどう取るのかについて、夜も眠れなくなるほど悩んだこともありました。最終的に家庭裁判所、主治医、ケアマネさん、親族の方のご協力のもと、認知症である現在の本人の意思を実現することができました。

何も考えずに書類だけ作ったり、意思能力がないからと現在の本人の言葉を聞き流すこともできたかもしれません。

でも自分の無力さに涙を流しながらも、周りの専門家たちにも相談するなど悩み考え抜いて決定できたことを誇りに思っています。

 

ーー司法書士のやりがいについて

 

「あなたに頼んでよかった」と言われることです。司法書士としてやるべきことをやっているだけなのに感謝されるのは不思議に感じることもありますが、うれしいですね。

 

ーーポリシーや座右の銘を教えてください

 

「転んでも、ただでは起きない」

 

研究者の夢を諦め司法書士の資格を取得したこともそうですが、逆境は乗り越えています。

 

ーーオススメの本を教えてください

 

 

【民法等改正の実務ポイント】

こういう改正についての実務本は、てっとり早く全体が把握できるのでありがたいですね。常に新しい知識を得られるように勉強しています。

 

ーー趣味はなんですか?

 

最近は燻製にハマっています。材料はすべて100均で揃うし自宅で簡単にできるのでオススメです。

 

3キロジョギングして環境イベントへ

 

走ることも好きで、先日も庄内緑地で年忘れマラソンに参加しました。子どもと一緒に走ることもあります。

 

 

あとは、手芸も好きです。いただき物のミシンで、書類を入れるトートバッグやおそろいの椅子カバー、エプロンをつくったり。子どものTシャツもリメイクするなどして楽しんでいます。

 

リメイクしたTシャツ

 

書類も運ぶ、手作りのA4トートバッグ

 

ーー今後の目標は

 

司法書士登録して15年というのに、司法書士に見えないとお客さまに言われるので(笑)。もう少し貫禄をつけたいですね。

また、両親のいない未成年者の後見を務める「未成年後見人」にも挑戦してみたいです。

一般の方には聴き馴染みのない言葉かもしれませんが、例えばひとり親家庭の場合、自分がもし亡くなってしまったら子どもはどうなるんだろうと不安に思う方もいらっしゃいますよね。事前に遺言により未成年後見人を指定しておけば、その方が「親代わり」となり、成人まで身上監護と財産管理をしてくれます。

 

2022年からは成年年齢が18歳に引き下げられましたが、遺された財産の管理など、18歳の子がスムーズにできるかというとまだまだ難しいところもあるでしょう。しかし成人すれば、すべて本人の自己責任となってしまう。否が応でも、他の子よりは早く大人になる必要に迫られて戸惑うことも多いのではないでしょうか。

成長し自分の考えを持てるようになってきた10代頃から、必要な知識や心構えを少しずつ伝えていき、18歳を迎え自分自身で財産管理をしていく日を迎えるまでのサポートをしていく。機会があればそんな後見人業務をやってみたいですね。

 

黒河先生、ありがとうございました!

 

 

取材/テキスト ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)

インタビュアーより

笑いながら「司法書士に見えないって言われるんです」と話してくださった黒河先生。理系研究肌らしいキリッとした表情の奥に、優しさが見え隠れしている人情深い先生で、私には貫禄と威厳がしっかり感じられました。女性や子ども、高齢者など困っている人を助けたいという奉仕の心を大切に業務をされています。

 

※インタビューの内容は2023年2月取材時のものです。最新の状況は事務所に直接お問い合わせいただくか、司法書士名古屋中央支部へお問い合わせください。

 

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(希望者多数の場合、ご希望に沿えない場合もございますのでご了承ください。)

司法書士名 黒河 理絵先生
所属事務所 黒河理絵司法書士事務所
住所 〒451-0012
名古屋市西区稲生町1丁目10番地の2
電話番号 052-524-2274
WEBアドレス https://kurokawa.business.site/

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