上家 美恵子 先生
名古屋中央支部に所属する先生方にインタビューするこの企画。第5回目は、パラリーガルから司法書士へ転身し、多くの人を救い続ける上家(じょうけ) 美恵子先生です。
ーー経歴を教えてください。
もともとは、出身校である南山高校の英語教諭を目指していました。お茶の水女子大学英文科へ進学し、英語の教員免許を取得。大学4年生になっていざ就職!というときに学校に電話をかけてみたら…空きがないと。
私立高校は現教員がやめないと採用は出ないことに気づいていなくて…完全に考えが甘かったですね(笑)
そこから方向転換して、英語力を活かして国際法律事務所(現在のアンダーソン・毛利・友常法律事務所)に就職しました。仕事の大半が英語で、パラリーガルとして英文契約書の作成、翻訳などの渉外企業法務を行っていました。
ーー英検1級について。
大学1年生の時に、なんとなく英検を受けてみようと思ったんです。誰にも相談せず、初めての英検で1級を受けて合格しました!
中学から英語が好きでしたが、特別な勉強も留学もしていません。なのでちょっとした自慢です(笑)
ーー司法書士になったきっかけは?
仕事をしていくなかで自分自身で資格を取りたいという思いが膨らんでいきました。そこで、LEC(資格予備校)の司法書士試験の通信講座を取ったんですが、在職中は連日深夜2~3時までの残業があり、結局勉強できませんでした。
法律事務所を退職してから短期集中で勉強し、15ヶ月のプログラムを約8ヶ月で一発合格しました。
ーー合格後の状況はいかがですか?
実は、司法書士として開業する前に出産や育児を経験したいと思っていました。そこで開業を先延ばしにして、息子が4歳のときに主人と一緒に丸の内総合法務事務所を開業したんです。
司法書士は資格さえ取っておけば、後からでもスタートできる点が大きなメリットですね。
…とは言え私の場合はなんのコネもなく開業したので、まったく仕事がありませんでした。月に数回程度「謄本取り」というおつかいを1回1000円で引き受けるとか…そんな毎日が続きました。
ーー転機となった出来事はなんですか?
開業した平成14年はちょうど「闇金ニュース」の全盛期でした。新聞やテレビでは毎日のように、追い詰められて自殺した人を報じていたんです。そこで、借金で追い詰められている人たちを救おうと、債務整理の相談会などを行っている「愛知かきつばたの会」に決死の覚悟で飛び込みました。
初めて参加した日のことは忘れもしません…
「家じゅうの小銭をかき集めて、地下鉄代を工面して相談に来ました。帰りは歩いて帰ります」「電気もガスも止められて、真っ暗な中で暮らしています。ここで受任を断られたら死ぬしかない」という方々を目の当たりにして、NOと言える訳がないと思いました。
命すら危ぶまれるほど悩んでいる人たちを救う術・方法を、司法書士である私は知っているんです。
ーー債務整理という分野について。
今でこそ「過払金」などの言葉を耳にするようになりましたが、当時はまだ簡裁代理権や過払金制度もありませんでした。債務整理は司法書士にとって全く人気のない分野で、債務整理を取り扱っている司法書士は変人扱い(笑)。私も同期の司法書士仲間から「ヤミ金の上家」というありがたくない称号?をいただきました…。
それでも平成15年に、簡裁代理権の認定第一期試験に合格。私が代理権を取得した直後に過払金ブームがやってきて、多くの司法書士も債務整理を手がけるようになりました。
今では過払金自体がほとんどなくなり、債務整理の分野は開業当初と同じく儲からない分野に戻っていますね。
ーー仕事のポリシーはなんですか?
助けを求めて来てくれた人を断らない。
儲かるかどうかで仕事を選ばない。
これが、私が開業してから19年貫いてきたポリシーです。今の私の債務整理の依頼者の大半は、生活保護世帯の方(法テラス案件)です。
ーー仕事のやりがいを教えてください。
生気がなくどんよりした表情で借金の相談に来られた方が、帰るときには、心の重荷を下ろしたようにさっぱりした表情で帰っていかれます。そして、共通してある言葉を口にします。「先生、やっと今日から寝られそうです」「先生と話して光が見えてきました」
だから、この仕事はやめられません。
感謝のお手紙をいただく機会も多くあり、「先生のおかげで命が助かりました」「私たち家族が暮らしていけるのは、すべて先生のおかげです」などと綴られています。
登記のお仕事だけやっていたら、こんな手紙はもらえなかったんじゃないかなと思います。
ーー事務所の雰囲気を教えてください。
自分が生まれ育った地域で、行政書士である主人と運営している事務所です。
私自身は、開業3年目に「JETRO(日本貿易振興機構)名古屋」の対日投資支援センターのオフィシャルリーガルアドバイザーになりました。これは、外資系企業が日本へ進出する際の日本子会社設立登記など、法的なお手伝いを英語で対応するお仕事です。
主人は、行政書士として日本へ転勤してきた社員の在留資格をサポートするなど、ふたりで世界各国の対日進出を多くサポートしてきました。いきなり、英語で電話がかかってくるのも、この事務所独自のカラーですね。
ーー趣味や息抜き方法を教えてください。
博物館明治村で毎年開催されている謎解きゲームにはまって10年以上、住民登録(年間パスポート)をして足繫く通っています。
また、司法書士会主催のゴルフコンペで優勝したことがありますが、たまたま隠しホールにはまっただけで、ゴルフの腕前はたいしたことありません(笑)
コロナの流行以降、どちらもお出かけできていないので、また行ける日を楽しみにしています。
ーーこれから司法書士を目指す人や若手へのメッセージ。
試験勉強はどうしても登記関連の内容が多いと思いますが、実際は裁判事務など仕事の幅は広く、多くの経験が待っています。
そして、可能であれば簡裁代理権はぜひ取ってください。仕事が100倍楽しくなりますよ。
ーー今後の活動や目標は?
司法書士会では、前期まで家事事件研究委員会の委員長をしていました。女性司法書士には、離婚関係、夫の不倫関係の相談が多く寄せられますので、「知らない」では済まされない分野だと思っています。
また、両親の介護の経験から、女性による女性のための終活支援を行うNPO法人「さくらんぼの会」も運営しています。やると決めたら突っ走る性格なので、忙しい時期に人集めなどに奔走しつつ立ち上げました。間に合いませんでしたが、母に入ってもらいたかったな…と思っています。
これからも多くの方の助けになるような活動をしていけたらと思っています。
ーー上家先生、ありがとうございました!
取材/テキスト ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)
インタビュアーより
とってもエレガントなワンピースで出迎えてくださった上家先生。「個人事務所だから好きな格好してるの」と優しい笑顔に心を撃ち抜かれました。熱い想いを秘めながらも「自分の使命を果たすこと」に向き合う姿勢、そしてご主人とのウィットに富んだ掛け合いに、憧れを通り越して幸せな気持ちになれました。
※インタビューの内容は2021年8月取材時のものです。最新の状況は事務所に直接お問い合わせいただくか、司法書士名古屋中央支部へお問い合わせください。
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司法書士名 | 上家 美恵子 先生 |
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